音楽ばかり聴いてきた。今のようにお手軽に聴ける時代でもなかったから、ひたすら集中して聴いていた。夕ご飯が済んで、7時くらいから8時までは、飽きもせずに毎日必ず聴いていた。休日は少しばかり長く聴けたからうれしかった! 当時はレコードの時代だったが、子供がお小遣いではなかなか買える金額じゃなかった。何ヶ月かお小遣いをためて、二千数百円を握りしめてレコード屋に向かった。どれを買うか、悩みに悩む。そこに売られているレコードを端から端まで全てチェックする。悩む。なにせ数か月分のお小遣いを費やすんだ。変なのを買ってしまっては大変だ。これも今と違ってあらかじめ曲を知ることなんてほとんど出来なかったから、完全にヤマカンで決めるしかないのだが、それでも悩む。世間一般で言われている世評をかすかな頼りとして、ジャケットを睨む。レコードのジャケットは、当時はまだまだ凝られていて、レコード会社が推したいレコードにはかなり凝ったジャケットが奢られていた。有名なデザイナーのものや、名画といわれているものをあしらったもの、様々で楽しかったが、いつも行く店の在庫されたレコードのジャケットなど全て覚えてしまった。悩みに悩んで一枚選び、やっとの思いで買う。さあ買っちゃったぞ。もう後戻りはできないぞ。どんな音楽が入っているんだろう。世間はあんなこと言ってたけど、本当なんだろうか。気に入らなかったらどうしよう。。様々に考えながら家に帰る。途中で雨に降られた。傘など持ってない。レコードを抱きかかえるように上着の中に隠して濡れないように持って帰った。宝物を濡らすわけにはいかないもんね。そうやって買ってきたものの中にはもちろん何が良いのか全く分からないものもあった。残念で、悔しくて、泣きたい気分にもなったが、いや、ここは世評を信じて何度も聴く。面白くないが、それこそ我慢して何度も何度も聴く。面白くないはずはないはずだと、居眠りしようがどうであろうが何度も何度も何度も聴く。数か月の努力を無駄にできるはずもない。と、ある日、突然その曲が素晴らしいものであることに気付くんだ。え?そうなの?すごいじゃないか!突然、いきなり大好きな曲に変わってしまって、もうこうなればこっちのもので、お気に入りとしてまたまた毎日のように聴く。こうやって、自分の曲が増えていった。